の立っている湯を盛った大きな杓《ひしゃく》を持ってきた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はあの湯をどうするだろうと思って見ていた。夜叉は男の傍へ往って裂かれた腹の上へ杓を持って往き、それを傷口へ注いだ。するとまた他の夜叉がやはり同じような湯の杓を持ってきて、それを女の腹の傷口へ注いだ。
「あれはどうするところだろう」
※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は不思議に思って鬼使の一人に聞いた。
「あれは汚れた腹の中を洗っているところだよ」
鬼使はむぞうさに答えた。
「何故洗うだろうね」
「あの男は医者だよ、あの女の夫の病気を癒してやってるうちに、あの女と姦通したが、そのうちに夫が死んでしまった、べつに手をおろして殺したというではないが、そんなことで病人を大事にしなかったから、殺したも同じことだ、だからああして腹を洗ってるよ」
「そうかなあ」
一行はまた歩いた。
僧侶や尼僧達がたくさん裸になって立っている処があった。そこは夜叉達が牛や馬の皮を持ってきて、それを尼僧の頭から覆《かぶ》せていた。覆せられた者はそれぞれ牛や馬になった。一人の馬の皮を被せられた
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