員がおり、また鬼卒も控えていた。
 鬼使は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]を階段の下へ連れて往って、そこへ押し据えるようにした。
「ここに控えておれ」
 ※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はそこへ跪《ひざまず》いた。と、一人の鬼使は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の傍に残り、一人は階段を登って殿上へ往った。
「令狐※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]を捕えてまいりました」
 すると王が頷いて、※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の方を見おろして激しい声で言った。
「その方は儒書を読んでおりながら、自分の身を検束することを知らないで、みだらな辞《ことば》を吐いて、我が官府をそしるとは、何事だ、その方を犁舌獄《りぜつごく》へ下すからそう思え」
 その声が終るか終らないかに、三四人の鬼卒が※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]の処へ走ってきた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はもう両手を掴まれ、頭髪を掴まれた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は懼《おそ》れて傍にある檻楯《てすり》に掻きついた。
「放せ」
「何をする」
 鬼卒達は※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]を引き放して曳きずって往こうとしたが、※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は一生懸命に掻きついているのでなかなか放れない。
「しぶとい奴だ」
 鬼卒達は無理にその手を引き放そうとした。と、その拍子に檻楯が折れた。※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]はもう犁舌の獄へ下らなければならなかった。彼は大声で叫んだ。
「令狐※[#「言+饌のつくり」、第3水準1−92−18]は人間の儒士であります、罪がないのに刑を加えられようとしております、もし天がこれを見ておられるなら、どうか罪のないことを明かにしてください」
 王の側に緑袍《りょくほう》を著て笏《しゃく》を持った者が坐っていた。緑袍の男はこれを聞くと、王の方へ向って言った。
「あの男は、人の陰私《いんし》を訐《あば》くことを好む者でございます、ただ罪を加えても伏しませんから、供書を取って、犯している罪を明かにするがよろしかろうと思います、そうすればとやかくいう詞《ことば》がないと思われます」
 王はその
前へ 次へ
全8ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング