したので、許宣は王主人の許へ預けられることになった。
許宣は王主人の許に世話になってから半年ばかりになった。彼はそこで毎日|無聊《ぶりょう》に苦しめられていた。と、ある日、王主人が室へ入ってきた。
「轎に乗った女がきて、お前さんを尋ねている、了鬟《じょちゅう》も一人|伴《つ》れている」
許宣は心当りはなかったが、好奇《ものずき》に門口へ出てみた。門口にはかの白娘子と青い上衣を着た小婢が立っていた。許宣は驚きと怒りがいっしょになって出た。
「この盗人《どろぼう》、俺をこんな目に逢わしておいて、またここへ何しに来たのだ」
「私は、決して、そんな悪いものではありません、それをあなたに分弁《いいわけ》したくてまいりました」
白娘子は心もち綺麗な首を傾げてさも困ったというようにした。
「いくら俺をだまそうとしたって、もうその手に乗るものかい、この妖怪《ばけもの》」
許宣の後から出てきた王主人は、許宣に門前でやかましく言われては、隣家へつけてもていさいがわるいので、その傍へ往って言った。
「遠くからいらした方らしいじゃないか、まあ内へ入れて、話をしたらどうだね」
王主人はそう言ってから
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