て、こんなに大きくなりましたが、その御厄介ついでに、も一つお願いしなくてはならないことがあります、私は、婚礼したいと思います」
「婚礼か、婚礼は大事だから、一つ考えて置こう、なあお前」
李幕事は細君の顔を見たが、それっきり婚礼のことに就いては何も言わなかった。もすこし具体的な話をしようと思っていた許宣は、もどかしかったがどうすることもできなかった。
酒がすむと李幕事は逃げるように室を出て往った。許宣はしかたなしに李幕事の返辞を待つことにして待っていたが、二日経っても三日経っても何の返辞もなかった。そこで許宣は姐の処へ往った。
「姐さん、この間のことを、兄さんと相談してくれましたか」
「まだしてないよ」
「なぜしてくれないのです」
「兄さんが忙しかったからね」
「忙しいよりも、兄さんは、私が婚礼すると、金がかかると思って、それで逃げてるのじゃないでしょうか、金のことなら大丈夫ですよ、ありますから」
許宣はそう言って袖の中から五十両の銀《かね》を出して姐の手に渡した。
「一銭も兄さんに迷惑はかけませんよ、ただ親元になって、儀式をあげてもらえばそれでいいのですよ」
姐は金を見て笑顔に
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