北斗と南斗星
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)趙顔《ちょうがん》
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趙顔《ちょうがん》という少年が南陽の平原で麦の実を割っていると、一人の旅人がとおりかかった。旅人は管輅《かんらく》という未来と過去の判る人であった。その旅人は少年の顔を見て、
「お前さんは、なんという名だ、気の毒なことだ」
と言った。少年は気になるので麦を割ることを止めて訊いた。
「なにが気の毒ですか、私は趙顔というのですが」
「そうかな、お前さんは、二十歳《はたち》を過ぎないで、早世《わかじに》をするよ」
少年はおどろいて旅人の前へ往って地べたへ顔をすりつけた。
「早世することを知っていらっしゃるなら、長生することも御存じでしょう、どうか教えてください」
「人の生命は、天が掌《つかさど》ってるから、わしの力では、どうすることもできない」
旅人はこういってからずんずんとむこうの方へ歩いて往った。少年は自個《じぶん》一人の力ではどうにもならないので、父親に話して、父親から頼んでもらおうと思った。走ってすぐ近くにある自個の家へ帰り、父親の姿を見るなりあわただしく言っ
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