た。
「お父さん、大変なことが出来ました、今、不思議な旅人が来て、私を見て、二十歳にならないで早世すると言いました、私は早世することが判るなら、長生することもできるだろうから、教えてくれと言ってたのみましたけれど、生命のことは、天が掌ってるから、わしにはどうにもできないと言って、往ってしまいましたが、あれは、ただの人でないと思います。お父さんが一緒に往って、頼んでください、きっとあの人は、長生することを教えてくれると思います」
 父親も驚いた。
「そうか、そいつは大変だ、一緒に往って、頼んでみよう」
 二人は厩へ往って馬を引出し、親子で乗りながら旅人の往った方へ向けて走らした。支那(中国)の里程で十里位も往ったところで、かの旅人の姿を見つけた。旅人に近くなると父親は馬から飛びおり、旅人の前へ往って地べたへ額をすりつけてお辞儀をした。
「今、忰から聞きますと、あなた様が、忰が早世するとおっしゃってくださいましたそうでございますが、天にも地にも一人しかない忰に先だたれましては、この世になんの望みもなくなります、どうかあなた様のお力で、忰の早世を逃れるようにしてくださいますまいか、お願いでご
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