まだ云いたいことがあるか」
「はい、この間は衣服《きもの》から一切私の物を埋めて貰いましたが、まだ家にあった金のことが気になってなりません、どうか金もついでに埋めてください」
「金か」
「金でございます、その金のことが気になって、浮ばれません」
金と云ってもいくら埋めて好いか判らない、それに医師《いしゃ》や葬式のために非常に入費がかかって、現金があまりないことは判っていた。
「金がいくらあったら好い」
「いくらと云うことはありませんが、五十両くらいあればよろしゅうございます」
「お前の病気や葬式に金が要って、現金はあまり手許にないが、五十両ぐらいならどうかなるだろう」
「どうか願います」
伯父さんは父親にも相談しなければ悪いと思った。
「お父さん、あれもあんなに云いますから、埋めてやろうではありませんか」
父親も云うとおりにしてやらねばならないと思った。
「そうでございますとも、そう云うことなら埋めてやりましょう」
其処で伯父さんが云った。
「それでは、明日、きっと埋めてやるから、安心して迷わないが好い」
「ありがとうございます」
「家のことは決して心配しないが好い、此方へは藤
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