不動像の行方
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)背後《うしろ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)山内|監物《けんもつ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
[#…]:返り点
(例)御盗被[#レ]成候所
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本話
寒い風に黄ばんだ木の葉がばらばらと散っていた。斗賀野の方から山坂を越えて来た山内|監物《けんもつ》の一行は、未明からの山稼ぎに疲労し切っていた。一行は六七人であった。その中には二疋の犬が長い舌を出し出し交っていた。路の右手に夕陽を浴びた寺の草屋根が見えて来た。
「あすこに寺があったかなあ」と、監物は銃を左の肩に置きかえて云った。
「ありました。あれは清龍寺の末寺で積善寺といいます」
と、監物の背後《うしろ》を歩いていた臣《けらい》の一人が云った。その臣の背には獲物の牡鹿が乗っていた。
「そうか、あれで一服しようじゃないか」
「そうでございます、が、今日は殺生の途中で、穢《けが》れておりますが」
「なに、今時は、坊主からして、魚も喫《く》えば、獣も喫ってるじゃないか」
「
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