ってみな」
「そう」
源吉はそう云って邪気の無い眼をくるくるさして対手を見た後に祠の方へ往った。祠の右側に並んだ榎の枝には一条の微陽《うすび》が射していた。源吉は祠の前へ往くとそのまま短い草の生えた処にちょこなんと坐った。それを見ると松の浮根に乗っていた小供は、獅子鼻の顔をはじめ仲間の顔をつらつらと見たが、悪戯そうな笑いたくてたまらないと云う顔であった。
「さあ、云いな」
松の浮根に乗っていた小供にうながされて源吉は口を切った
「お諏訪様、お諏訪様、いっしょに遊びましょう」
それは敬虔な云い方であった。それを聞くと小供達の笑い顔が集まった。松の浮根に乗っていた小供は、手をふってそれを押えるようにした。
「お諏訪様、お諏訪様、いっしょに遊びましょう」
源吉は後から後からと繰りかえした。松の浮根に乗っていた小供は、源吉がそうして一心になって傍見《わきみ》もしないのを見きわめると、手をあげて皆を招くようにしておいて、先ず己《じぶん》で爪立ちながら跫音のしないようにして歩きだした。それを見ると獅子鼻をはじめ仲間の小供達も、その後からそれと同じような恰好をしながら踉いて往った。そうして置
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