碧玉の環飾
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)代宗帝《だいそうてい》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)勅使|高力士《こうりきし》
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唐の代宗帝《だいそうてい》の広徳年間の事であった。孫恪《そんかく》という若い貧しい男があって、それが洛陽にある魏土地《きとち》という処へ遊びに往った。遊びに往ったといっても、それは物見遊山《ものみゆさん》のためでなく、漂白して往ったもののように思われる。ところで、この魏土地に女主人で袁《えん》を姓とする豪家があった。孫恪は別に目的もなかったが、その前を通りかかったので、ちょっとした好奇心から覗いてみると、門番も何人《たれ》もいない。で、門の裡《なか》へ入ると、青い簾《すだれ》を垂れた小房《こざしき》があった。孫恪はその傍へ寄って、裡《うち》の容子《ようす》を伺おうと思っていると、裡から扉を開けて若い綺麗な女が顔を出した。
孫恪はこの女は主人の娘であろうと思ったので、あいさつしようとすると、女は驚いて引込んでしまった。孫恪は調子が悪いのでぽかんと立っていると、青い着物を着た少女が出てき
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