、わけてそれをやるのです。もし、厄逆《しゃっくり》の症になると、虎形をするとすぐなおるのです。これがその験《しるし》じゃないでしょうか。」
十一娘はそっと孟といいあわせて、孟を遠くの方へいくようなふうをさして家を出し、夜になって三娘に強いて酒を飲ました。三娘がもう酔ってしまったところで、孟がそっと入って来た。三娘は醒めていった。
「あなたは私を殺し、もし戒を破らないで、道がなったら、第一天に昇ることができたのです。こんなになったのも運命です。」
そこで起きて帰っていこうとした。十一娘はほんとの自分の心をいってあやまった。三娘は、
「こうなれば私もほんとのことをいうのです。私は狐です。あなたの美しい姿を見て、あなたをしたって、繭《まゆ》の糸のようにまとっていて、こんなことになったのです。これは情魔の劫《ごう》です。人間の力ではないのです。再びとどまっておると、魔情がまたできます。あなたは福沢が長いから体を大事になさい。」
といいおわっていってしまった。夫婦は驚歎した。
翌年になって孟は郷試と会試に及第して、翰林学士となったので、名刺を出して范祭酒に面会を申しこんだ。祭酒は愧《は》
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