終るとそれを石の下に置いて、今度は剣を舞わして身を躍らしたが、恰《あたか》も電光のようであった、食物は定まった物はなく、平生は果実を喫っていたが、犬を非常に悪《にく》んで、それを見ると一滴の血も滴《こぼ》さないように喫った、午《うま》の時を過ぎて他山《ほかのやま》へ飛び往き、晩になって帰ってきたが、欲しいと思った物は得ないということはなかった、女達に対しては言葉つきも丁寧であった、この鬼神は既に一千年の寿命がきて、死期の近い事を予期していた」
 と言った。※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]は財宝と美女を将《い》て山をおりたが、美女達はそれぞれその夫を探して帰らした。
 翌年になって※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]の妻は小供を生んだが、その形は猿に似ていた。後、梁が滅んで陳の朝になると、陳の武帝が※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]を攻殺《せめころ》した。※[#「糸+乞」、第3水準1−89−89]の従者の江総《こうそう》という者が、その小供を隠匿して養育したが、至って敏捷活発で、鬼神の言ったとおり、後に文字を識り、書を著わして家名を揚げたのであった。



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