に山を生む。次に木祖句句廼馳を生む。次に草祖葺野姫を生む」としてあって、歴史家はこれを日本民族が日本島国発見の擬人化神話としているが、私はそれを地震と火山の活動による土地の隆起成生とするのである。
 今回の地震には、房総半島の南部から三浦半島、湘南沿岸、鎌倉から馬入《ばにゅう》川の間、伊豆の東部などは、土地が二尺乃至三四尺も隆起したということであるが、それはアメリカの西海岸からアラスカ群島、千島群島をかすめて、表日本の海岸に沿うて走っている世界最大の地球の亀裂線、専門家のいわゆる外測[#「外測」はママ]地震帯の陥没から起ったもので、元禄十六年の地震は、その地震帯の活動の結果であると言われている。要するにわが国は、こういうふうに外側地震帯及び日本海を走っている内側地震帯の幹線に地方的な小地震帯がたくさんの支線を結びつけているうえに、火山脈が網の目のようになっているから、その爆発に因る地震も非常に多く、従って土地の隆起陥没もまた多い。天武天皇の時大地震があって、一夜にして近江の地が陥没して琵琶湖が出来ると共に、駿河に富士山が湧出したという伝説も、その間の消息を語るものである。安永八年の桜島
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