ようにな」
そのうちに左の※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]の内に掻き裂くような痛みを覚えた。そして、しばらくして目を開けて見ると几《つくえ》の上の物がはっきり見えた。方棟は喜んで細君に話した。細君がよくよく見ると膜に小さな穴が開いて、黒い睛がきらきらと光っていたが、その穴は僅かに椒《さんしょ》の実ぐらいであった。翌日になると翳がすっかり消えてしまって瞳がふたつになっていたが、ただ右の目の螺の殻のような翳はそのままであった。そこで双方の瞳の人が一方の※[#「目+匡」、第3水準1−88−81]の中にいっしょにいるようになったことがわかった。方棟は片方の目が眇《すがめ》になったけれども、両眼の人に較べてより以上に物が見えるようになった。方棟はそれがためにますます自分で行いに注意したので、郷中の人からほめられるようになった。
底本:「中国の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
1987(昭和62)年8月4日初版発行
底本の親本:「支那怪談全集」桃源社
1970(昭和45)年発行
入力:Hiroshi_O
校正:noriko saito
2004年9月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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