で来ないかも判らん、よくお婆さんの腹を聞いてくれ、私のいたらん処はなおすと云うて心配しておりますよ、お婆さんは何故我家へ来ません」
「なに往くとも、どうせお前等二人に世話になろうと思うておるが、四十九日の間は、魂魄が家の棟を離れないと云うことじゃからな、四十九日でもすんで、そのうえでと思うておるところじゃ、作造さんになんの気に入らんことがあるものか」
「そんなら、四十九日がすんだら、我家《うち》へ来るの」
「四十九日でもすんだなら、そのうえで定めようと思うておるが、まだお婆さんはこのとおり体が達者だから、当分一人で気楽にこうしておっても好い」
「お婆さんは気楽で好いかも知れんが、お婆さんを一人置くと、私等が心配でならん、それに第一用心が悪いじゃないか」
「なに大事な物は、本家に預けてあるし、病に罹りゃすぐ目と鼻との間じゃ、近処の衆が、一走りに知らしてくれるし、心配はないよ」
「それは、そうでも、お婆さんを無人の家へ一人置くことは、世間の手前もありますから、四十九日がすんだら我家へ来たらどう」
「往っても好い、私はべつにどうと云うことはないしな」
「それでは、来て貰いますよ」
 と、孫|
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