擦れ違うひょうしに見るとそれは施十娘であった。世高が声をかけようとすると老婆もこっちを見た。そして、世高の顔を一眼見るや否や、恐ろしそうにして走りだした。そして、走りながら観世音菩薩を繰りかえし繰りかえし唱えた。
 世高はすぐ老婆が自分を死んだものとして恐れているということを知ったので、後から追っかけて往った。
「施十娘、施十娘、私は世高だよ、私は生きているのだよ、恐れることはないよ、私は理由があって、生きているのだよ」
 そのとたんに老婆は転んで酒壷を前へほうりだした。世高はその傍へ寄った。
「施十娘、私は生きかえっているのだよ、決して死んでいはしないよ、恐れることはないよ」
 そう言って老婆を抱き起し、それから酒壷も拾ってやりながら、自分と秀英の蘇生したことを話した。
「私は、後の祟りが恐ろしいので、その晩、李夫と二人で逃げだして、此方に女が縁づいておりますから、それをたよってきて、世話になっておりますよ」
 世高はそれから老婆に伴れられて、老婆の女《むすめ》の家へ往った。女の夫や女が出てきて、ほうりだして滴した酒壷の酒を温めてもてなしてくれた。
 旅費に窮している世高は、そこで世
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