いた。老婆は安心した。
「では、あの方に知らして、喜ばしてあげましょう」
老婆は品物を包みの中に収めて帰ろうとした。秀英はその老婆の袂に手をかけた。
「お婆さんは、このことは、何人にも言っちゃ、厭よ」
「言うものですか」
老婆は夫人にも挨拶して家へ帰った。店へはもう世高が来て待っていた。世高は入ってくる老婆の顔色を見て事のなったことを直覚した。世高はそこで秀英に詩を寄せることにして家へ帰って往ったが、その夜も興奮して眠られなかった。
そして、朝になるのを待ちかねていた世高は、白綾の汗巾《はんけち》へ墨を濃くして七言絶句を書いた。
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天仙なお人の年少を惜む
年少|安《いずくん》ぞ能く仙を慕わざらん
一語三生縁已に定まる
錦片をして当前に失わしむること莫《なか》れ
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世高はその詩を施十娘の店へ持って往った。
「お婆さん、どうかこれを届けてください、そして、お嬢さんから返事をもらってください、後でうんとお礼をしますよ」
老婆はその詩を袂へ入れ、花粉や花簪児の荷を持って劉家へ往った。そして、勝手口から入って夫人に言った。
「昨日、お嬢さ
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