「では、私が今度児を生むのを待っててください、漢産を返しますから」
 一年あまりすると竹青は双児を生んだ。それは男と女の児であった。そして男を漢生《かんせい》とつけ、女を玉佩《ぎょくはい》とつけた。魚は漢産を伴れて家へ帰ったが、一年の中に漢水へ三四回も往くので不便であった。魚はそこで家を漢陽に移した。
 漢産は十二で郡の学校へ入った。竹生[#「竹生」はママ]は人間には美しい質の女がいないからといって、漢産を呼んで妻を迎えさし、そして帰してよこした。漢産の妻になった女の名は扈娘《こじょう》といって、これも神女の産れであった。
 後、和が死んだ。漢生及び妹の玉佩も皆喪の礼を行った。葬儀が畢《おわ》って漢産は留まり、魚は漢生と玉佩を伴れて出て往ったが、それから帰らなかった。



底本:「中国の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
   1987(昭和62)年8月8日初版発行
底本の親本:「支那怪談全集」桃源社
   1970(昭和45)年11月30日発行
※「旦那様がお見えになりました」の「旦那」は底本では「旦邦」でしたが、親本を参照して直しました。
入力:Hiroshi_O
校正:門田裕志
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