、扈従臨むところ野に青草無し。而して某|方《まさ》に炎々赫赫、寵を怙《たの》みて悔ゆるなく、召対《しょうたい》方《まさ》に闕下《けつか》に承け、萋斐《せいひ》輒《すなわ》ち君前に進む。委蛇《いい》才《わずか》に公より退けば、笙歌已に後苑に起る。声色狗馬《せいしょくくば》、昼夜荒淫、国計民生、念慮に存ずるなし。世上|寧《むし》ろ此の宰相有らんや。内外|駭訛《がいか》、人情|洶々《きょうきょう》、若し急に斧※[#「金+質」、185−5]《ふしつ》の誅を加えずんば、勢必ず操莽《そうぼう》の禍を醸成せん。臣夙夜《しんしゅくや》祗《つつし》み懼れ、敢て寧処《ねいしょ》せず。死を冒して列款《れつかん》し、仰いで宸聴《しんちょう》に達す。伏して祈る奸佞の頭《かしら》を断ち、貪冒《たんぼう》の産を籍し、上は天怒《てんど》を回し、下は輿情を快にせんことを。如《もし》果して臣の言|虚謬《きょびゅう》なれば、刀鋸鼎※[#「金+護のつくり」、第3水準1−93−41]《とうきょていかく》、即ち臣が身に加えよ、云々」と言ってあった。
上奏は終った。曾はそれを聞いて顫えあがった。それはちょうど冰水《ひょうすい》を
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