促織
蒲松齢
田中貢太郎訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)明《みん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|疋《ぴき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+啜のつくり」、314−2]《と》って
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 明《みん》の宣宗《せんそう》の宣徳年間には、宮中で促織《こおろぎ》あわせの遊戯を盛んにやったので、毎年民間から献上さしたが、この促繊は故《もと》は西の方の国にはいないものであった。
 華陰《かいん》の令をしている者があって、それが上官に媚《こ》びようと思って一|疋《ぴき》の促織を献上した。そこで、試みに闘わしてみると面白いので、いつも催促して献上さした。令はそこでそれをまた里正《りせい》に催促して献上さした。市中の游侠児《あそびにん》は佳《よ》い促織を獲ると篭《かご》に入れて飼い、値をせりあげて金をもうけた。邑宰《むらやくにん》はずるいので、促織の催促に名を仮《か》って村の戸数に割りあてて金を取りたてた。で、一疋の促
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