ばかりであった。
二人はその板敷の上へ蓑《みの》を着て横になったが、昼間の疲れがあるのですぐ眠ってしまった。
そのうち巳之吉は、寒いので目をさました。小屋の戸が開け放しになっていて雪がさかんに舞いこんでいた。
「茂作さんが外へ出たのか」
巳之吉は茂作の方を見た。其処には真白い衣服《きもの》の女がいて、それが茂作の上へのしかかって、その顔へ呼吸《いき》を吐きかけていた。巳之吉は驚いて声を立てようとした。と、女は茂作を棄てて巳之吉の上へ来た。それは白い美しい顔であったが、眼が電《いなずま》のように鋭かった。
巳之吉は衝《つ》き飛ばして逃げようとしたが、体も動かなければ声も出なかった。女はその時はじめて巳之吉の貌《かお》に気が注《つ》いたようにした。巳之吉は田舎に珍しい※[#「女+交」、第4水準2−5−49]童《びなん》であった。
「この事を何人《たれ》にも話しちゃいけないよ、もし話したら、お前さんの命はないよ、判ったね、忘れちゃいけないよ」
女はそのまま巳之吉を放れて戸外《そと》へ出、降りしきる雪の中へ姿を消していった。
巳之吉ははね起きた。そして、戸をぴしゃりと閉めて、背でそ
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