って村役人を罵倒《ばとう》した。村役人は慚《は》じると共に恚《いか》って周を捕縛して監獄へ繋《つな》いだ。
周が家を出てから暫《しばら》くして成は周の家へいった。成はそこで周が訴状を持って城内へいったことを知ったので、驚いて止めようと思って城内へかけつけたが、いってみると周はもうすでに獄裏の人となっていた。成は足ずりして悔《くや》んだがどうすることもできなかった。
その時に三人の海賊がつかまっていた。村役人はそれに金をやって周の仲間であるとつくりごとをいわせ、その申立《もうした》てを盾《たて》にして周の着物をはぎとって惨酷に拷問した。成はその時面会に来た。二人は顔を見あわして悲しみ歎いた。二人はそこで相談したが周の無実の罪を明らかにするには天子に直訴《じきそ》するより他に道がなかった。周はいった。
「僕は重い罪をきせられて、こんなに監獄に繋がれ、ちょうど鳥が篭《かご》に入れられたようだし、弟はあっても年が若くて、ただ差入れをする位のことだけしかできないし。」
成はそれを聞くときっとなっていった。
「それは僕の責任だ。僕がやる。むつかしい事件で、それで急を要しない事件なら、友人の必
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