あまりして児に家内を持たしたが、それは任侍郎[#「侍」は底本では「時」]の孫女であった。それは任侍郎の妾が女の児を生んだところで、数ヶ月にして亡くなったが、後になって三娘が祝に捉えられて伴れもどされたということを聞いたので、祝の家へ往って祝夫婦と親類づきあいをするという約束をしていた。とうとう任の家では孫女を祝の児の嫁にして、それから往来するようになったのであった。
一日《あるひ》、祝は児夫婦を傍へ呼んだ。
「上帝が、わしが人世に功があると言われて、わしを四|涜牧龍君《とくぼくりゅうくん》にしてくれたので、これから出かける」
児が何か言おうとしていると、庭のさきに四頭の馬をつけた黄※[#「膽」の「月」に代えて「巾」、247−15]車《こうせんしゃ》が来たが、その馬の股には皆|鱗《うろこ》があった。祝夫婦はそれを見ると盛装して乗った。児夫婦は泣きながらお辞儀をしたがその瞬間に見えなくなってしまった。その日寇家へは三娘が来て別れを告げた。両親は泣いて引き留めようとした。
「祝さんがもう出かけたのですから」
そして、門を出たかと思うと、もう見えなくなった。祝の児の名は鶚《がく》、字《あ
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