茶を捧げて持ってきた。それは年の頃十四五の綺麗な少女で指輪も腕釧《うでわ》も透きとおった影の映りそうな水晶であった。祝は少女の手から茶碗をもらって、うっとりとなって口のふちに持って往ったが、茶の匂いがひどく良いので一息に飲んで、
「どうか、もう一ぱい」
と、言って二杯目の茶をもらったところで、媼さんが外へ出て往った。それを見て若い祝は少女の細そりした手を握ったが、少女が厭な顔もしないでその手の指輪の一つを脱《ぬ》いた。少女は頬を赧くしながらにっと笑った。祝の心は怪しくなってきた。
「あなたはどうした方です」
と、聞くと少女は囁くように言った。
「晩にいらっしゃい、わたし此所にいるわ」
祝は夜になってくることにして、同年の男の所へ往こうとしたが、非常に旨かった茶のことを思いだしてその葉をすこしもらって出かけ、そして、同年の男の家へ往ったところで気もちが悪くなった。祝は途中で飲んだ茶のためではないかと思って、同年の男にわけを話した。
「あぶない、そいつは水莽鬼だ、僕の親爺もそれで死んでるのだ、そいつはどうかしなくちゃならない」
同年の男が顔の色を変えて驚いたので祝もふるえあがったが
前へ
次へ
全10ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング