類を出して前へ置いた。
「あなた達は、神通力がありながら、何故こんな者どもに住居を取られたのです」
李生は不審をした。
「それは、私達は五百歳でございますが、この猿は、八百歳でございましたから、とても敵《かな》いません、しかし、この猿も天の咎を受ける時がきましたから、あなたに殺されました、天の咎がないと、とても、あなたの手にかかる者ではありません」
李生はその老人達に路を訊いて帰ろうと思った。
「お礼などはいらない、その代り、帰る路を教えておくれ」
「それは、訳のないことでございます、眼をおつむりになるがよろしゅうございます」
李生と三人の女は、老人の言葉に従って眼をつむった。恐ろしい風の音と雨の音が聞えた。そして、その声が止んだので眼を開けた。自分達の立っている前を一匹の大きな白鼠が数疋の鼠を連れて歩いていた。李生達はその白鼠を見ていた。
鼠は見付の丘へ往って横穴を掘りはじめた。窓のような穴がすぐ開いた。李生達はその穴の処へ往った。穴の外には別の世界があった。李生達はその穴を抜けて往った。そこには見覚えのある山路があった。
李生は銭家へ女を送って往った。銭翁は大いに喜んで
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