て少年で進士になり、県令から侍御《じぎょ》になった。その王は元豊《げんぽう》という子供を生んだが、ひどい馬鹿で、十六になっても男女の道を知らなかった。そこで郷党では王と縁組する者がなかった。王はそれを憂えていた。ちょうどその時、一人の女が少女を伴《つ》れて王の家へ来て、その少女を元豊の夫人にしてくれといった。王夫妻はその少女に注意した。少女はにっと笑った。その顔なり容《かたち》なりが仙女《せんじょ》のように美しかった。二人は喜んで名を訊いた。女は自分達の姓は虞《ぐ》、少女の名は小翠《しょうすい》で、年は十六であるといった。そこで少女を買い受ける金のことを相談した。すると女がいった。
「私と一緒にいると腹一ぱいたべることもできません。こうした大きなお宅に置いていただいて、下女下男を使って、おいしいものがたべられるなら、本人も満足ですし、私も安心します。金はいただかなくてよろしゅうございます。」
王夫人は悦《よろこ》んで小翠をもらい受けることにして厚くもてなした。女はそこで小翠にいいつけて、王と王夫人に拝《おじぎ》をさして、いいきかせた。
「このお二方は、今日からお前のお父さんお母さんだ
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