小翠
蒲松齢
田中貢太郎訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)王太常《おうたいじょう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)広西|中丞《ちゅうじょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「ころもへん+因」、第4水準2−88−18]褥《しとね》
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 王太常《おうたいじょう》は越人であった。少年の時、昼、榻《ねだい》の上で寝ていると、空が不意に曇って暗くなり、人きな雷がにわかに鳴りだした。一疋《いっぴき》の猫のようで猫よりはすこし大きな獣が入って来て、榻の下に隠れるように入って体を延べたり屈めたりして離れなかった。
 暫くたって雷雨がやんだ。榻の下にいた獣はすぐ出ていったが、出ていく時に好く見るとどうしても猫でないから、そこでふと怖《こわ》くなって、次の室にいる兄を呼んだ。兄はそれを聞いて喜んでいった。
「弟はきっと、ひどく貴《とうと》い者になるだろう。これは狐が来て、雷霆《らいてい》の劫《ごう》を避けていたのだ。」
 後、果し
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