が細君を離縁してから、母は多方《ほうぼう》へ嫁をもらう相談をしたが、母親がわからずやのひどい人であるということが世間の評判になったので、どこにも嫁になる者がなかった。
三、四年して大成の弟の二成がだんだん大きくなって、とうとう先に結婚した。その二成の細君は臧《ぞう》という家の女であったが、気ままで心のねじけたことは姑にわをかけていた。で、姑がもし頬をふくらまして怒ったふうを見せると、臧は大声で怒鳴った。それに二成はおくびょうで、どっちにもつかずにおずおずしていたから、母の威光はとんとなくなって、臧にさからわないばかりか、かえってその顔色を見て強いて笑顔をして機嫌をとるようになった、しかし、それでもなお臧の機嫌をとることができなかった。
臧は母を婢のように追いつかったが、大成は何もいわずにただ母の代わりになってはたらいた。器を洗うことから掃除をすることまでも皆やった。母と大成とはいつも人のいない処へいって泣いた。
間もなく母は気苦労がつもって病気になり、たおれて牀《とこ》についたが、便溺《しものもの》から寝がえりまで皆大成の手をかりるようになった。それがために大成も昼夜睡ることがで
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