さん、あんな者を置いちゃいけない、おんだしなさい。」
といった。叔母は、
「まァ、まァ、門口でそんなことをいってはいけない、お入りなさいよ。」
といったが、大成は入らないで、
「おい、珊瑚出ていけ。こんな所にいてはいけない、出ろ、出ていけ。」
といって怒鳴った。間もなく珊瑚は大成の前に出て来た。
「私にどんな罪がございましょう。」
大成はいった。
「お母さんに仕えることができないじゃないか。」
珊瑚は何かいいたそうにしながら何もいわないで、俯向《うつむ》いて啜《すす》り泣きをした。その泪《なみだ》には色があってそれに白い衫《じゅばん》が染まったのであった。大成はいたましさにたえないので、いおうとしていた詞《ことば》もよして引返した。
それからまた二、三日して、母は珊瑚のことを聞き知った。怒って王家へいって汚い詞で王を誚《せ》めた。王も威張って負けていなかった。かえってさんざんに母の悪口をいった。そのうえ、
「嫁はもう出ているじゃないか、まだ安家のなにかになるのですか。私が自分で陳家の女を留めてある、安家の嫁を留めてあるのじゃないよ。なんで他の家のことに口を出すのです。」
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