首のない騎馬武者
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)越前《えちぜん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)元|北《きた》の庄《しょう》
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越前《えちぜん》の福井《ふくい》は元|北《きた》の庄《しょう》と云っていたが、越前宰相|結城秀康《ゆうきひでやす》が封ぜられて福井と改めたもので、其の城址《じょうし》は市の中央になって、其処には松平《まつだいら》侯爵邸、県庁、裁判所、県会議事堂などが建っている。そして、柴田勝家《しばたかついえ》の居城の址《あと》は、市の東南の方角に在って、明治四十年までは石垣なども残っていたが、四十年になって市中を流れている足羽川《あすばがわ》を改修したので、大半は川の底になってしまった。
明治の初年のことであった。月の明るい晩、某《それがし》と云う者が北の庄の大手のあった処《ところ》を歩いていたところで、幾何《いくら》往っても同じ処へ帰って来て、どうしても他へ往くことができなかった。そこでふと気をつけてみると、己《じぶん》の周囲《まわり》には城の枡形《ますがた》らしい物の影が映っていた。大手の址は
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