酒友
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)車《しゃ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)嚢中|已《すで》に
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車《しゃ》という男は、貧乏でありながら酒ばかり飲んでいた。そして、夜よる三ばい位の罰杯を飲まさないと寝ることができないというほどであった。だから枕もとには、平生《いつも》酒を置いてないことがなかった。
ある夜眼が醒めて寝がえりをしてみると、人といっしょに寝ているような気がしたが、しかし、これは蒲団がはげて落ちたからであろうと思って、手をやって摸《な》でてみると、毛がもじゃもじゃと触った。それは人でなしに猫の大きなようなものであった。火を点《つ》けてみると狐であったが、ひどく酔っぱらったとみえてぐうぐうと眠っていた。おかしいと思って枕頭の瓶の酒を見ると空になっていた。車は笑って、
「こいつは俺の酒友だな」
と言ったが、びっくりさすに忍びないから、蒲団をかけてやって、自分もいっしょに寝たが、狐がどうするか見たいので、燭を消さずに見ていた。と、狐は夜半《よなか》比《ごろ》に起きてあくびをした。車は笑って、
「よく寝
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