に苦しめられていた。と、ある日王主人が室へ入って来た。
「轎《かご》に乗った女が来て、お前さんを尋ねている、※[#「Y」に似た字、第4水準2−1−6]鬟《じょちゅう》も一人|伴《つ》れている」
許宣は心当りはなかったが、好奇《ものずき》に門口へ出てみた。門口には彼《か》の白娘子と青い上衣を着た小婢《じょちゅう》が立っていた。許宣は驚きと怒《いかり》がいっしょになって出た。
「この盗人、俺《おれ》をこんな目に逢わしておいて、またここへ何しに来たのだ」
「私は、決して、そんな悪いものではありません、それをあなたに弁解《いいわけ》したくてまいりました」
白娘子は心持ち※[#「女+朱」、第3水準1−15−80]《きれい》な首を傾けて、さも困ったと云うようにした。
「いくら俺をだまそうとしたって、もうその手に乗るものかい、この妖怪《ばけもの》」
許宣の後からやって来た王主人は、許宣が門前でやかましく云っていて人に聞かれても面白くないと思ったので、その傍へ往った。
「遠くからいらした方らしいじゃないか、まあ内へ入れて話をしたら宜いじゃないか」
王主人はそう云ってから白娘子の方を見て云った。
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