日経《た》っても三日経っても何の返事もなかった。そこで許宣は姐の所へ往って云った。
「姐《ねえ》さん、この間のことを、兄《あに》さんと相談してくれましたか」
「まだしてないよ」
「なぜしてくれないんです」
「兄さんが忙しかったからね」
「忙しいよりも、兄さんは、私が婚礼すると、金がかかると思って、それで逃げてるのじゃないでしょうか、金のことなら大丈夫ですよ、ありますから」
許宣はそう云って袖の中から五十両の銀《かね》を出して姐の手に渡した。
「一銭も兄さんに迷惑はかけませんよ、ただ親元になって儀式をあげてもらえば宜いのですよ」
姐は金を見て笑顔になった。
「おかしいね、お前、どっかのお婆さんと婚礼するのじゃないかね、まあ宜いわ、私がこれを預ってて、兄さんが帰って来たなら、話をしよう」
許宣はそれから姐の室を出て来た。姐はその夜李幕事の帰ってくるのを待っていて、許宣の置いて往った金を見せた。
「あれは、何人《だれ》かと約束しているのですよ、親元になって、儀式さえあげてやれば宜いのですよ、早く婚礼をさそうじゃありませんか」
「じゃ、この金は、女の方からもらったものだね」
李幕事はそ
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