れを見て大声をあげようとすると、船頭が※[#「竹かんむり/高」、第3水準1−89−70]《さお》でついた。金の父親もそのまま水の中へ落ちてしまった。金の母親がその声を聞いて出て窺《のぞ》いた。船頭がまた※[#「竹かんむり/高」、第3水準1−89−70]でつきおとした。王はその時始めて、
「大変だ、大変だ、皆来てくれ。」
といった。金の母親の出ていく時、庚娘は後にいて、そっとそれを窺《のぞ》いていたが、一家の者が尽く溺れてしまったことを知ると、もう驚かなかった。ただ泣いて、
「お父さんもお母さんも没くなって、私はどうしたらいいだろう。」
といった。そこへ王が入って来て、
「奥さん、何も御心配なされることはありませんよ。私と一緒に金陵《きんりょう》にお出でなさい。金陵には田地も家もあって、りっぱにくらしておりますから。」
といった。庚娘は泣くことをやめていった。
「そうしていただくなら、私は他に心配することはありません。」
王はひどく悦んで庚娘を大事にした。夜になってしまってから王は女を曳《ひ》いて懽《かん》を求めた。女は体※[#「女+半」、265−15]《たいはん》に託してはぐら
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