狐と狸
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)司空《しくう》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「者/火」、第3水準1−87−52]《に》てしまった。
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燕《えん》の恵王《けいおう》の墓の上に、一疋の狐と一疋の狸が棲んでいた。二疋とも千余年を経た妖獣であったが、晋の司空《しくう》張華《ちょうか》の博学多才であることを知って、それをへこますつもりで、少年書生に化けて、馬に乗って出て往こうとすると、華表神《かひょうじん》が呼び止めて、
「君達はどこへ往くのか」
と聞いた。華表神とは墓の前にある鳥居の神である。狸は華表神の問いに答えて、
「司空の張華と、議論しに往くところだ」
と言った。すると華表木《とりいのき》の精が、
「張司空は才人であるから、二人が命を失うばかしでなく、その禍が俺たちにもかかってくる、どうかやめてくれ」
と言ったが、狸と狐は聞かずに出かけて往った。
そして二疋で、張華の処へ往って、張華に逢って議論をはじめた
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