が、その議論にはさすがの張華も弱らされた。張華はこの少年たちはどうしても人間でないから、化けの皮を剥いでやろうと考えていると、知合の雷孔章《らいこうしょう》という者がやってきた。張華は雷孔章の顔を見ると、
「怪しい書生が二人来ている」
 と言って話した。雷孔章は、
「君は国の棟梁で、賢者を薦め、不肖者を退けている人じゃないか、自個《じぶん》より議論が偉いといって、妖怪あつかいにするは怪しからん、しかし真箇《ほんとう》に怪しいものなら、猟犬を伴《つ》れてきて、けしかけたらいいじゃないか」
 と言った。
 そこで張華は猟犬を伴れて、少年たちのいる室《へや》へ入ったが、少年たちは平気であった。
「僕達の才智は、天から与えられたものだ、それを却って妖怪として、犬を伴れてくるとは怪しからん」
 と狸の方が言った。張華はこれを聞くと、
「百年の精なれば、猟犬を見れば形を現わすが、千年の妖なら、千年の神木の火で見ればきっと形を現わす」
 と言った。雷孔章が、
「そんな神木がどこにあるか」
 と言うと、張華は、
「燕の恵王の塚の前の華表木が千年を経ているということだ」
 と言って、使をやってその木を取
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