きないものですから、暫く夫婦になっておりました、これからは慶娘と興哥さんを夫婦にしてください、そうすれば、慶娘の病気もすぐ治ります」
こう言った慶娘の声も物腰も興娘そのままであった。
「お前の心情は察するが、何故、そんな人を驚かすようなことをする」
防禦は叱るように言った。
「興哥さんとの縁が尽きないものですから、一年の許しを受けて、興哥さんと夫婦になっておりました、どうか私の今のお願いを聞いてください」
「よし、では、慶娘と興哥さんをいっしょにして、この家を譲ることにする」
慶娘は泣きだした。そして、興哥にすがりついた。
「あなたは慶娘を可愛がってやってください、でも、私も忘れないように」
慶娘は悲しそうに泣き入ったかと思うと、そこへ倒れてしまった。皆が驚いて介抱していると眼を開けた。
慶娘の病気はその場かぎり治ってしまった。慶娘はその日、自分の言ったことも、したことも覚えていなかった。
防禦は日を選んで、興哥と慶娘を結婚さした。
興哥はかの釵を売って鈔金二十錠を得、その金で揚州の城東にある后土廟へ往って、道士に頼んで三昼夜興娘の祭をした。
祭がすむと夢に興娘が出てき
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