ころからそのまま不問にしてあった。
当時の法として罪を犯す者があれば、本人はもとより兄弟妻子にも及ぶことになっていたので、その兄弟として自首して出た以上、罪科を行わないわけにはゆかなかった。横山は困ったことになったと思った。それでも役目の手前如何ともすることができない。
「では何分御沙汰があるまで、謹慎しておらるるがよかろう、が御沙汰を受けるとなると、重い罪科でござるから、一命はもとより無いものと思わねばならんが、もともと其処許《そこもと》は、他国におられて、六之丞殿と同腹でないと云うことが判っておるから、藩の方でも、そのままに差置かれた、……まあ、兎も角、家へ帰って御沙汰を待っておるがよかろう」
横山はそれとなしに吉平へ謎をかけた。その謎は吉平にも判らないことはなかったが、彼はそれを潔としない程気を負うた武士|気質《かたぎ》の男であった。
「御親切なお詞《ことば》に対して、何ともお礼の申しあげようもございませんが、兄が御成敗になった以上、男として生ながらえておるわけにはまいりません、何とぞ如何ようにも御成敗くださるように、おとりはからいをねがいます」
「立派なお覚悟でござる、然ら
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