円朝の牡丹燈籠
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)萩原新三郎《はぎわらしんざぶろう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)数ヶ月|前《ぜん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「女+朱」、第3水準1−15−80]
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       一

 萩原新三郎《はぎわらしんざぶろう》は孫店《まごだな》に住む伴蔵《ともぞう》を伴《つ》れて、柳島《やなぎしま》の横川《よこかわ》へ釣に往《い》っていた。それは五月の初めのことであった。新三郎は釣に往っても釣に興味はないので、吸筒《すいづつ》の酒を飲んでいた。
 新三郎は其の数ヶ月|前《ぜん》、医者坊主《いしゃぼうず》の山本志丈《やまもとしじょう》といっしょに亀戸《かめいど》へ梅見に往って、其の帰りに志丈の知っている横川の飯島平左衛門《いいじまへいざえもん》と云う旗下《はたもと》の別荘へ寄ったが、其の時平左衛門の一人娘のお露《つゆ》を知り、それ以来お露のことばかり思っていたが、一人で
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