怪譚小説の話
田中貢太郎
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《》:ルビ
(例)纏《まと》まらない
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(例)※[#「月+昔」、第3水準1−90−47]
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私は物を書く時、面白い構想が浮ばないとか、筋が纏《まと》まらないとかいうような場あいには、六朝小説を出して読む。それは晋唐《しんとう》小説六十種で、当時の短篇を六十種集めた叢書であるが、それには歴史的な逸話があり、怪譚があり、奇譚《きたん》があって、皆それぞれ面白い。泉鏡花《いずみきょうか》子の『高野聖《こうやひじり》』は、その中の幻異志《げんいし》にある『板橋三娘子《はんきょうさんろうし》』から出発したものである。板橋《はんきょう》に三娘女《さんろうじょ》という宿屋をしている老婆があって、それが旅人に怪しい蕎麦《そば》の餅《もち》を啖《く》わして、旅人を驢《ろば》にして金をもうけていたところで、趙季和《しょうきわ》という男がそれを知って反対《あべこべ》にその餅を老婆に啖わして老婆を驢に
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