怪僧
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)伴《つ》れ、
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)一|嚇《おど》し
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官軍の隊士飯田某は、五六人の部下を伴《つ》れ、勝沼在の村から村へかけて、潜伏している幕兵を捜索していた。それは、東山道から攻めのぼった官軍を支えようとした幕兵を一戦に破ったあとのことであった。
夕方になって唯《と》ある森の陰に小さな寺を見つけた。飯田はその寺で一泊するつもりで、夕陽の光を浴びて寺の方へ往った。山門の柱も朽ちて荒れた寺であった。鐘楼には釣鐘も見えなかった。
部下の一人は銃を引きずるように持って前《さき》に入って往ったので、飯田は山門の口に立って待っていた。暫く待っていても部下は帰って来なかった。で、他の一人が見に往ったが、間もなく初めの部下といっしょに何か云い云い帰って来た。
「いくら玄関から声をかけても返事をしないから、庭の方へ廻ってみると、一人の坊主が、壮《わか》い女とべちゃべちゃ話しておるから、一泊したいと云うと、困ると云うから、一|嚇《おど》し嚇して泊るようにして来ました、彼奴
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