鶴は、王母の所から借りてきたものです、貴郎の毒はひどいが、この玉と雄黄《ゆうおう》とを練って飲むと、すぐ癒りますから心配はいりません」
 女は侍女にその玉を渡して薬を拵えてこさした。侍女は次の室へ行ってすぐ薬を拵えてきた。
 彭は三日ばかりすると起きれるようになったので、女といっしょに帰って行った。其所はやはり孤山の麓にある水晶閣であった。
 女は生れて二月ぐらいになる児《こども》を抱いてきた。それは女から生れたものであった。彭は喜んだ。
「この子は来復《らいふく》とつけよう」
 それを聞くと女は泣きだした。
「私はこの子の成長を見ることができませんから、貴郎が好く面倒を見てやってください」
「何故そんなことを言うのだ」
「私は紫府《しふ》の侍書《じしょ》でしたが、貴郎とこういうことになったために、その罪で黄岡《こうこう》の劉修撰の家の児に生れかわることになりました」
 女はそう言って泣きながら彭の手から児を取って乳を飲ましていたが、すぐそれを彭に返してひらひらと出て行った。そして、十足ばかり行くともう見えなくなってしまった。



底本:「中国の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
 
前へ 次へ
全15ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング