火傷した神様
田中貢太郎
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)天津神《あまつかみ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その時|伊豆国《いずのくに》に、
−−
一
天津神《あまつかみ》国津神《くにつかみ》、山之神《やまのかみ》海之神《うみのかみ》、木之神《きのかみ》草之神《くさのかみ》、ありとあらゆる神がみが、人間の間に姿を見せていたころのことであった。
その時|伊豆国《いずのくに》に、土地の人から来宮様《くのみやさま》と崇《あが》められている神様があった。
伝説にもその神様がどんな風采《なり》をしていたと云うことがないから、それははっきり判らないが、ひどく酒が好きであったと云うところからおして、体が大きくてでっぷりと肥り、顔は顔で赧《あか》く、それで頬《ほお》の肉がたるみ、そして、二つの眼は如何《いか》にも柔和で、すこしの濁気《にごりげ》のない無邪気な光を湛《たた》えていたように思われる。
その来宮様は、某日《あるひ》例によってしたたか酒を飲んで帰って来た。その時は師走《しわす》の寒い日であったが、酒で体が温まって
次へ
全9ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング