抜いてその傍に番をしながら、もとの人になるのを待っていたが時間がたってから葉がますます萎《しお》れてきた。馬はひどく懼《おそ》れて、はじめて黄英に知らした。黄英は知らせを聞いて驚いて言った。
「しまった」
 奔《はし》って往ってみたが、もう根も株も枯れていた。黄英は歎き悲しんで、その梗《くき》をとって盆の中に入れ、それを持って居間に入って、毎日水をかけた。馬は悔い恨んでひどく曾を悪《にく》んだが、二三日して曾がすでに酔死したということを聞いた。
 盆の中の花はだんだん芽が出て、九月になってもう花が咲いた。短い幹に花がたくさんあって、それを嗅ぐと酒の匂いがするので、酔陶と名をつけて、酒をかけてやるとますます茂った。
 後に女《むすめ》は成長して家柄のいい家へ嫁入した。
 黄英はしまいに年をとったが、べつにかわったこともなかった。



底本:「中国の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
   1987(昭和62)年8月8日初版発行
底本の親本:「支那怪談全集」桃源社
   1970(昭和45)年11月30日発行
入力:Hiroshi_O
校正:門田裕志、小林繁雄
2003年8月3日作成

前へ 次へ
全15ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング