王成
蒲松齢
田中貢太郎訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)王成《おうせい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|石《せき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)細君[#「細君」は底本では「組君」]は
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 王成《おうせい》は平原《へいげん》の世家《きゅうか》の生れであったが、いたって懶《なま》け者であったから、日に日に零落《れいらく》して家は僅か数間のあばら屋をあますのみとなり、細君と乱麻《らんま》を編んで作った牛衣《ぎゅうい》の中に寝るというようなみすぼらしい生活をしていたが、細君が小言をいうので困っていた。それは夏の燃えるような暑い時であった。その村に周《しゅう》という家の庭園があって、牆《へい》は頽《くず》れ家は破れて、ただ一つの亭《あずまや》のみが残っていたが、涼しいので村の人達がたくさんそこへ泊りにいった。王成もその一人であった。
 ある朝のことであった。寝ていた村の人達は皆帰っていったが、懶け者の王成一人は陽が高く昇るまで寝ていて起き、それでまだぐすぐすしていて帰ろうとすると、草の根もとに金
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