のじゃないのですか」
阿宝は、
「けっしてだましません」
と固く誓った。孫の鸚鵡は目をみはって何か考えているようであったが、暫くして女が髪を結うために履《くつ》を脱いで牀《ゆか》にあがると、鸚鵡はふいにおりてその履の一つを銜《くわ》えて飛んで往った。阿宝は急いで呼びかえそうとしたが、もう遠くの方へ往ってしまった。そこで女は婆さんの婢《じょちゅう》に言いつけて、孫の家へ履を探しに往かしたが、婆さんが往ってみると、孫はもう寤《さ》めていた。家の者は鸚鵡が繍《ぬい》のある履を銜えてきて、下に堕ちて死んだのを見て不思議に思っていると、孫がやがて生きかえって、
「おい履を取ってくれ」
と言った。家の者がその理由を知るに苦しんでいると、そこへ阿宝の家の婆さんが入ってきて、孫を見て、
「その履は何処にあったのです」
と言った。孫は言った。
「これは阿宝と誓いをした物です、あなたから言ってください、僕はお嬢さんの金諾《きんだく》を忘れないって」
婆さんが帰って往って孫の言ったことを言った。阿宝はますます不思議に思って、わざと婆さんからその容子を母親に話さした。母親はそれを確かめたうえで、
「
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