この人は、評判も悪くはないが、ただ相如《そうじょ》のような貧乏だからね、数年間も婿を選んでいて、そんな貧乏人をもらったとなると、名のある人から笑われるからね」
阿宝は孫に誓っているから決して他へは往かないと言った。阿宝の父親と母親はとうとう女の言葉に従った。
阿宝の父親は孫を入婿にしようかどうかということを評議した。すると阿宝が言った。
「婿は久しく姑《しゅうと》の家にいるものじゃありません、それにあの人は貧乏人ですから、久しくおれば久しくあるほど人に賤《いや》しまれます、私は一旦承知しましたから、小屋がけに甘んじます、藜※[#「くさかんむり/霍」、第3水準1−91−37]《あかざ》のお菜もいといません」
孫はそこで阿宝を親しく迎えて結婚したが、二人は互いに世を隔てて逢った人のように懽《よろこ》んだ。
孫はそれから細君が化粧料として持ってきた金ですこし豊かになった。またいくらか財産もふえたので書物に一生懸命になって、家のことは見向きもしなかった。阿宝はよく貯蓄して、他のことで孫を累《わずら》わさなかった。三年して家はますます富んだが、孫はたちまち糖尿病のような病気になって死んで
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