と》めていた。と、体がひらりと鸚鵡になって、不意に飛びあがりそのまますぐに阿宝の所へ往った。阿宝は入ってきた鸚鵡を見て喜んでつかまえ、肘に鎖をつけて麻の実を餌にやった。すると孫の鸚鵡は大声で叫んだ。
「お嬢さん、鎖をつけちゃ駄目です、僕は孫子楚ですよ」
阿宝はひどく駭いて鎖を解いた。孫の鸚鵡は動かなかった。そこで女は言った。
「あなたのお心は、心にきざんでおりますけれど、今となっては、禽《とり》と人と種類がちがいますから、結婚することができないじゃありませんか」
孫の鸚鵡が言った。
「僕は、あなたの側にいられるなら、本望だ」
他の人が餌をやっても食わなかったが、阿宝がやれば食った。そして、阿宝が坐るとその膝の上に止まり、寝るとその榻に止まった。
そんなふうで三日になった。阿宝はそれがひどく気の毒になって、陰に人をやって孫の家の容子《ようす》を見さした。孫は寝たまま気を失って、已に三日になっていたが、ただ胸のさきが冷えきらないばかりであった。阿宝はそこで言った。
「あなた、能《よ》く人になることができたなら、きっとあなたの、お心に従いましょう」
孫の鸚鵡が言った。
「僕をだます
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