た。そして、数日たってはじめてやっと起きることができたので、媒の婆さんの所へ往って傷痕を見せた。婆さんはびっくりして走って往って女に知らした。すると女がまたからかった。
「では、お婆さん、こう言ってちょうだいよ、あなたの馬鹿をとってくれってね」
婆さんは帰ってきてまたそれを孫に話した。孫は、
「婆さん僕は馬鹿じゃないよ、僕を馬鹿というのは間違っているよ」
とやかましく弁解したが、自分の腹の中を女に見せることができないということに気が注《つ》いて、
「阿宝が綺麗だといったところで、天女にはおよばないだろう、高くとまるにもほどがあるじゃないか」
と言ったが、それから阿宝と結婚しようとするの思いはなくなってしまった。
清明の節になった。土地の風習としてその日は女が郊外に出て遊ぶので、軽薄の少年が隊を組んで随《つ》いて往って、口から出まかせに女の美醜を品評するのであった。孫の同窓の友人も強《し》いて孫を伴れて郊外に往った。すると友人の一人が嘲って言った。
「一度、あの人を見ようと思ってるのじゃないかね」
孫も阿宝のことで自分をからかっているということを知っていたが、女からばかにせられ
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