うか早く出ていって弟を殺さないようにしてくれ。」
 女は恥かしそうにしていった。
「私は人じゃありませんが、ここのお父さんとの約束がありましたから、秦の家の姉さんが私を勧めてよこしました。私は子供を育てることができないから、とうに出ていこうと思いましたが、兄さんと姉さんが、可愛がってくださいますから、それでこうしていたのですが、しかし、もう疑われましたから、これからお別れいたします。」
 と、阿英は一羽の鸚鵡《おうむ》になって、ひらひらと飛んでいった。
 甘《かん》の父親がまだ生きている時、甘の家には一羽の鸚鵡を蓄《か》ってあったが、ひどく慧《りこう》な鳥であった。ある時※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]はその鸚鵡に餌《えさ》をやった。それは※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]が四つか五つの時であったが、父親に訊いた。
「なぜ、これを飼うのです。」
 父親は冗談にいった。
「お前のお嫁さんにするのだよ。」
 それから鸚鵡の餌がなくなりそうな時には、父親は※[#「王+玉」、第3水準1−87−90]を呼んでいった。
「餌をやらないと、お前のお嫁さんが死んでしまうのだよ。」
 
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